主体性を育む特長的教育
今、文部科学省は、これからの時代(VUCAの時代)を生きる子どもたちに必要な力として「生きる力」を身につけてもらえるように教育の中身を変えてきています。これまでは知識や技能を身につけさせる教育でしたが、これからは、知識や技能を身につけるだけではなく、それを使って社会変革(イノベーション)を起こすことができる資質能力(思考力、判断力、表現力、主体性、協働性など)を育成していくことを学校に求めています。しかし、この資質能力を育成することは簡単なことではないのです。教室中心の学習だけでは育成することができませんし、学んだことを実際の場面で活かす体験をするために多くの時間が必要なのです。
さて、沖縄三育中学校では、創立当初からこの資質能力を育成することに力を注いできました。そして、長い年月を掛けて育成するための教育(仕組みや仕掛け)の中身と方法を つくって、本校に入学した子どもたちに提供できるように用意しています。
それが「主体性を育む3つの特長的教育」です。具体的には「自然体験活動」「プロジェクト学習」「音楽活動」の3つです。「自ら思考し、行動する」ことをモット―として、主体性と、それに関連する資質能力を育んでいます。本校の教育に興味を持っていただけると幸いです。
「自然体験」って何?
自然体験活動は、「自然の中で、自然を活用して行われる活動」です。
具体的にはキャンプ、ハイキング、カヌー、動植物や星の観察、自然物を使った工作や自然の中での音楽会などがあります。その効果は、認知能力:言語能力や数学的能力など数値で測ることができる能力の土台となる非認知能力:主体性、やり抜く力、課題解決能力、豊かな人間性など「生きる力」を育むということが様々な研究によって明らかにされています。
本校は、沖縄という素晴らしい自然環境下にある学校として、その自然を最大限に活用した教育プログラムを提供しています。
遊べる子どもは伸びる
ものがなくては遊べない子ども達が増えている・・・
本当にそうなのでしょうか?手近に容易に遊べるものがあるから、遊びを想像しなくなっているだけなのではないでしょうか。「生きる力」は、通常の学習の場だけで培われるものではありません。自分で考え工夫して、自分で行動しないと遊べない場、すなわち、自然こそが「生きる力」を育む最適な場であると、私たちは考えます。
自然の中でしか学べないものがある
自然が私たちに与えてくれるものは癒しだけではありません。
自然は時に「意地悪」です。人間の思い通りにならなくて、簡単に答えが出なくて、決まった解決法が無くて…。でも、だからこそ学べることは無限大なのです。
「生きる力」を育む
「生きる力」。それは自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考えることによって培われる力。そして、主体的に判断し、行動し、より良い解決策を導き出す能力です。
それらは自らを律し、他者と協調し思いやる心や感動する心など、豊かな人間性と、たくましく生きるための健康的な身体や体力に他なりません。
バランス感覚を取り戻そう!
五感を駆使したリアルな自然との触れ合いを通じて、身体の使い方を学び、人間が本来持っているバランス感覚を取り戻しましょう。
教育プログラムとしての自然体験
2023年度本校は、日本教育科学研究所の研究指定校として採択されました。下の表にあるように、生徒の成長に資する活動にするため、年間を通じて様々なプログラムを実施しました。
自然体験活動年間スケジュール(2023年度実績)
学年 | 学期 | 頻度(時間) | 活動内容 |
---|---|---|---|
1年生 | 1学期 | 週1回(4時間) | 学校周辺の自然の中で、海遊び、山遊び、川遊び。 カヤック、スノーケリング、トレッキング、ネイチャーゲーム、ネイチャークラフト等 |
2年生 | 2~3学期 | 2週に1回(2時間) | |
3年生 |
生徒の声
僕が特に好きなアクティビティは、沢登りです。下流から上流へ向かうその道中で、神様が創り出した自然の素晴らしさに出会えるからです。 今一番したいのは、船で島に行くことです。そこでいろいろなチャレンジをしてみたいです。
中学1年 男子
プロジェクト学習
プロジェクト学習とは
課題解決型学習とも呼ばれ、プロジェクトや目標達成のために取り組む学習方法のことをいいます。プロジェクトの目標を設定し、その目標実現のために考え行動するなかで、思考力や実践力など様々なスキルを身につけます。また、チームを組んで課題解決へ取り組むことで、コミュニケーション力や課題探求力、自己表現力を育てます。
ミッションプロジェクト
学校の使命は何か、学校目標及び自己の目標は何かを改めて確認して意識する機会とし、「よりよい学校にするにはどうしたら良いか」を考えます。生徒自ら考えて行動することによって、目の前にある課題に気づくことができるようになるのです。
夢プロジェクト
「おにぎり山にウッドデッキを作りたい!」「みんなでクッキーを作りたい!」「ロケットを飛ばしたい!」等、「やってみたい!」を形にする、生徒の主体的な活動です。その実現のためには、学校に届け出て承認を受けることが必要です。承認されるには、誰もが納得する理由や目的を考えなくてはいけません。プレゼンテーションを行い、自分たちの力でプロジェクトを動かす機会を掴んだからこそ得られる学びがあります。
なお、承認されたプロジェクトには、保護者会から資金援助と技術援助を受けることができます。
PMプロジェクトチーム
学校行事の企画運営を有志メンバーで担当します。自ら望んで担った役割を通じて、生徒はリーダーシップだけではなく、企画力、マネジメント力、コミュニケーション力等もつけていきます。
準備をしていくなかで、上手くいかないことも勿論起こります。そんな時こそどう動くべきかを考え、自分たちで問題を解決し、みんなを導くリーダーとして成長していくのです。
探究ゼミ
「これはどうなっているんだろう?」「ここを深掘りするとどんなことが分かるんだろう?」そんな好奇心こそが学びの大きなモチベーションとなります。
週に一度、探究ゼミの時間をもっています。竪穴住居を作ったり、プログラミングについて学んだりと、自分が興味を持ったことを集中して学ぶことができます。
生徒の声
企画運営をしていくなかで、ファシリテーションスキル(会議等の進行をスムーズに進行 していく力)が身についたと思います。また、一緒に企画を進める仲間を信頼して仕事を分担することの大切さを学びました。自分達で企画した行事で、「楽しかった」という言葉を聞けた時にやりがいを感じます。
中学2年 女子
音楽教育の意義
本校における音楽教育は、音楽そのものの力を伸ばすことや、技術を高めることが1番の目的ではありません。音楽という芸術分野に向き合う中で、人としての成長を目指しています。神様から与えられたタラント(才能)を正しく育んでいくためにも、そして、自分の中に眠っている可能性を広げていくためにも、音楽に触れ、奏でる力は役立ちます。
近年頻繁に聴くようになってきた言葉にHQ(HUMAN QUOTIENT)『人間性指数』というものがありますが、これは「目的・夢に向かって、社会の中で協調的に生きるための脳力」のことで、あらゆる脳領域の力をうまくコントロールする役割を持っていると言われています。その力を効率的に育むのに最も効果があるものがピアノ学習なのだという研究もあります。
音楽には力があります。その音楽を教育に用いること。それが三育教育の音楽活動のテーマです。
音楽を通して育てたい生徒の姿
三育教育の中の音楽は、それがどのような活動であったとしても、神様への讃美というところに帰結することを目指しています。何をするにも神に栄光を帰す生き方ができる生徒を育む。それが最終的な目標です。自己主張のために音楽を利用するのではなく、神様を讃美するために用いられていた音楽を、本来の目的通りに使用する中で、音楽本来の
もつ最高の力を感じることができるはずです。
「こういうわけで、あなたがたは、食べるにも、飲むにも、何をするにも、ただ神の栄光を現わすためにしなさい。」
コリント人への手紙第一10章31節
身につけてほしいスキル
音楽活動を通し身につけて欲しい力が2つあります。一つ目は『自己を見つめ成長するための方法を見つける力』二つ目は『他者と調和する力』です。これらは人生という舞台にあっても必要な力です。音楽に向き合うということは、自己と他者の両方と向き合う事でもあるのです。その中で忍耐力・想像力・発想力・表現力を磨いていきます。
生徒の声
音楽が身近な家庭で育ったので、学校の音楽活動への参加は僕にとってはごく自然なものでした。 皆と音を合わせていく中で学んだことがあります。それは、周りの音をしっかり聴くということです。これは、良いハーモニーを生み出すためにとても大切なことです。
皆と協力して一つのものを作り上げる楽しさや、そこから学び得たことは、寮生活をはじめとした普段の生活にも生かされていると思います。
中学2年 男子